2019年6月21日金曜日

胸の高鳴り

かおりと二人して、最寄りのマラコフ駅からモンマルトル駅へ。チケット買うのに往生して、人に尋ねることにした。二人目の女性が英語OK。クレジットカードがどうやら使えないみたい。あとはコインしかないわねと。あ、あるかも。小銭を大量投入してやっとチケットを買った。しかし、クレジットカードも使えずに小銭もなかったらどうすんだ?

モンマルトルに近づくにつれ、自分の胸の鼓動が聞こえた。やっと行くことができる。先生が青春を謳歌し、制作に没頭した地、多くの著名な画家が下積み生活を送ったモンマルトルへ。

駅を出るとモダンなモンマルトルタワー。マロニエに挟まれた歩道を歩いていると、かおりが「あれ、画材屋じゃない?」と。入る。水彩画関係の商品が多かったが、画材から彫塑用品をはじめ、様々な商品が陳列されている。一気にテンションが上がる。パリに来たんだなあ。画家らしき青年が絵の具を物色している。男性二人組がパステルを目の前に話をしている。もうすぐ、スケッチブックが切れるので、一番安いものを買った。2.5€。モンマルトルで買ったスケッチブック。それだけで嬉しくなった。

街を歩く。安宿があるわけでもなく、田園風景が広がるわけでもなく、街中で画家がスケッチをしているわけでもない。街はすっかり変わってしまったようだ。ただ、藤田画伯を始め、先生が酒を酌み交わしたであろうカフェはそのままの姿であった。カフェ・ラ・ロトンデとレ・ドーム・カフェ。聞くところによると、貧乏画家が酒代を払えなくて絵を置いていくというような話だったと思うのだが、外見からはどう見ても高級レストラン。

一旦、通り過ぎて、グラン・エクスプロラトゥール庭園、リュクサンブール公園と進んだ。地元の人がまばらに、めいめいゆっくりしている感じ。人通りは少ない。撮影場所としてはどうなんだろうと話をしながら公園を進む。ちなみにリュクサンブール公園には、パリ万博に出品された「自由の女神像」の本物のレプリカがある。英語で書かれた説明文を読むと、像の事ではなくて、911で被害にあったアメリカとフランスの友好を示すために植樹されたオークの木の話が書いてあった。もう一つのフランス語の看板からは、作者の名前と万博とレプリカと本物はどっかにあるというような事が読み取れた。フランス語、結構、英語に近い単語があるから読めるときは読める。が、分からないときは全く分からない。

撮影場所を決められないまま帰路につく。明日、ルーブルの道すがら、もう一度撮影場所を探そうと。

その後「かおり貯金」でカフェ・ラ・ロトンデにてお茶。(正確にはワインとスイーツ)店に入るなり「お席はどちらがよろしいですか?」英語で話しかけられた。それなら話が早い。「モジリアニの絵の前の席がいいんですが」通されたのは、一番奥の中央のテーブル。これ、まさか本物か?ほとんどがレプリカだという話を聞いていたが、わざわざ通してくれた良い席だ。(後で調べたらレプリカだった。そうだよな。億超えの作品をレストランに展示できるわけがない)お代はチップを含めて40ユーロ。美味しかったが、高いなあ(笑)
30年前、僕がもし先生と研究室の修学旅行に行けていたら、当時のモンマルトルの面影がもっと残っていたんだろうな。ハチの巣と呼ばれた貧乏芸術家の集合住宅も解体されたと聞いていた。30年という月日は、モンパルナスを大きく変えてしまったのかもしれない。胸の高鳴りはすっかり消えていた。貧乏芸術家たちは、数年前テロのあったサンジェルマン通り近辺に越してしまったらしい。

列車に乗り帰宅。ハチの巣、せめてどこにあったかだけでも調べておこうと思った。すると、滞在場所の近くに現存するという情報が。解体したか移設したかという話だったのだが、どうやら話が変わって、保存されているようだ。胸が高鳴る。偉大な芸術家たちが、しのぎを削り、影響を与え合い、新たな表現に向かってのたうった場所が残っている。

明日、ルーブル美術館に行く前にバスで尋ねる。ルーブルとハチの巣。胸の高鳴りが止まらない。ルーブルに夜9時まで居て、コンコルド広場からシャンゼリーゼ通りを通って凱旋門を眺めて帰るんだ。

写真はカフェ・ラ・ロトンドと、自由の女神の本物(のレプリカ)