先生、私は今パリにいます。

学生時代、先生は酔うとフランス語を喋ったり、留学当時のフランスの様子を語ったりした。それが今、30年の時を経て鮮やかに蘇っている。エコールドパリ、モンパルナス、モンマルトル、当時活躍していた芸術家たちの話、芸術家が集まるカフェ、藤田先生の話、キキ、乱痴気騒ぎの話。パリにいるだけで、先生との会話が思い出される。

学生時代、私は貧しく、パリへの修学旅行に一人だけ行けなかった。土産話に、羨ましさ、行けなかった悔しさが入り混じった気持ちで耳を傾けた。土産に頂いた画集は30年経った今でも持っている。

ここに来るまで気づかなかったのだが、私は本当に心からパリに行きたかったようなのだ。今、パリの空気を吸っているだけで、どこからともなく憧れとも恐れともつかない不思議な感情が沸きあがってくる。30年間、ずっと自分の気持ちを押さえつけていたいたということに、昨日気がついた。

先生とご一緒したかった。明日、妻と二人でモンパルナスを歩きます。そしてこの街で「歴史の中で自分が何をすべきか考えろ」という先生のお言葉の意味を探します。

僕は、今作っているムービーがそれだと思っているのです。

パリに来ることができて本当に幸せです。先生ありがとうございました。

そして、この旅にご賛同してくださった皆様。本当にありがとうございます。

パリで30年越しの「答え合わせ」を、してまいります。