2019年5月27日月曜日

霧雨と晴れ間

大粒の雨から霧のような雨に変わった日曜日。56人の難民の足取りを追って取材に出かけた。

ホストのステファノさんから、難民船の墓場は好きに立ち入っても構わないという話を聞いたので、船の内部も撮影しようと。そして、56名がのってきた難民船が、あの小舟なのかそれとも、イミグレーションオフィスの横に接岸された大きな船なのか調べたかったのだ。

また、待遇を巡って難民が暴動を起こし閉鎖されたという、旧難民収容所もこの目に焼き付けたかった。

イミグレーションオフィスの近くの堤防に接岸された船。2日前までなかったという。恐らくは56名の難民の物だろうという話だった。その後、砂浜の小舟を探した。小舟はどうやら現地の漁師のものだったらしく、護岸に係留されていた。

難民船の墓場の取材をしていた時、現地の若者らしき二人に何やら罵声を浴びせられる。イタリア語がさっぱり分からないので何を言われたか分からなかったが、歓迎されていないことだけは分かった。触れてほしくないこともあろう。だが、私は事実を知りたいだけなのだ。そしてその事実を知ったからと言って、あなた方を非難するようなことは絶対にしないと、取材を続けた。大きな難民船の船内にはマットレスや衣服。ライフジャケットや枕などが散乱していた。恐らく、難民船として使われる直前まで、漁に使っていたとみられ、網もそのまま船内に放置されていた。

最後に850人を収容していたという、前難民収容所跡に足を運んだ。近くの人に聞くが知らないという。暴動で焼失したらしいが850人を収容できそうな土地はこの辺りには見当たらない。散々、散策した挙句、フェンスに囲まれ、雑草が生い茂る50坪余りの土地が収容所跡だということに気が付いた。この狭い場所にいったいどうやって850人の難民を収容したのだろう。

薄暗い天気も手伝って、気持ちがふさがる。この旅で最も心配していること。それは、シリアスな場面や、いかんともし難い場面に遭遇した時の気持ちの持ち様だ。ある程度予想はしていたが、余りの酷さに気力さえ奪われていくような気がした。

帰宅して一息ついていると、アンナさんがコンサートに行かないかという。島のマーチングバンドで、新たなスタジオのオープンを祝うイベントだという。ビールにワイン、ピザも振る舞われるとのことだったのでご一緒させていただいた。メンバーの奏でる音に元気を取り戻した気がした。

世の全ての人々が、音楽や芸術やスポーツを楽しむ。そんな世の中を望んでやまない。