2019年8月5日月曜日

新記録と時刻間違い

キエフには10人ほど友人がいる。撮影に協力してくださるかもしれないので、フェイスブックに「正午から2時間撮影します」と書き込んだ。で、11時に家を出て、路面電車で地下鉄駅に向かい、正午ごろ独立広場へ。ところが、広場の大型モニターの時計が13時を指している。あれ?ちなみに、SIMカードが自動的に滞在地域の時間を表示するモードになっているのだが、1時間ずれている。

もしかしたら、あの広場の時計、夏時間に合わせるのを間違えたんじゃね?と言いながら支度を始めて、撮影にかかった。昨日と同じく、誰も寄り付かない時間があるかと思えば、撮影が始まり、我々が安全で害がないということが分かると、怒涛のように撮影協力者が押し寄せてくる。

なんと2時間で50枚の撮れ高。こんなに短時間で、こんなに沢山とれたのは初めてではないだろうか。沢山、ご協力を頂いて嬉しかった半面、ちょっと複雑な気持ちになることがあった。

僕らを中国人だと思った男性が「中国人は国へ帰れ」と。何度も連呼する。遠くから歩いて次第に距離を縮めてくる。近くに来た時に「僕らは中国の隣の国から来ました」「どこだ?」「日本です」「日本人か。それなら良い」と。中国は最近、ウクライナにかなり投資をしているらしく、地元テレビでは好意的な報道がなされていた気がしたのだが。

かおり曰く、その時、たまたま英語OKの撮影協力者が現れて、男性に詳細を説明してくださったと。「東洋人は似ているからね」と。ただ、その後も男性は「中国人は・・・まったく・・・」とぶつぶつ言っていらっしゃったと、かおりが言っていた。

あとは、トルコからの旅行者だという男性が「本当に無料なの?」「はい。僕らは寄付もお金も必要としていません。撮影にご協力を頂きたいだけなんです」「僕はトルコ人なんだけど、こういうことを無料で行うというのが信じられないし、ショッキング(多分、単語が出てこなかったと思われる)なことでもある」「そうですか。私たちの旅費は友人たちからの寄付で賄われています。ですから、あなたから寄付を頂く必要はないのです」「そうか。でも、信じられない」「良ければご協力を頂けませんか?」「いや、信じられない・・・」と向こうに行ってしまった。まあ、あやしまれるのは慣れてきたようなきもするが、なんだかなあ・・・。

その後も、水を飲む暇もないほど、いろんな人と話をして、意図を伝え、協力を頂き、撮影をして、お礼を言った。気が付くと、2時3分前。あっという間の2時間だった。

50枚の祝杯をあげようと、かおりのクレジットカードで生ビールを頂くことにした。一杯160円。ペットボトルビールは安いが、ちょっと炭酸が薄いし、泡立ちも悪い。久々の生ビールは美味かった。で、店員さんに「あの、携帯の時刻が正しいのか確認したいんですが」というと「1時間遅れているわよ」と。危ない危ない。この携帯の時刻を信じていたら、明日の電車が出発した後に、中央駅で呆然とすることになっただろう。

手動で現地時刻に設定して、ほっと一息。腹が減ったので最寄りのマックに行って、ビッグマックセット。こちらはポテト大で400円弱。二人でつまんだ。まあ、ポーランドより安いなあ。

地下鉄(8フリブニャ、約24円)とトラム(同じく8フリブニャ)を乗り継いで、自宅に戻った。ちなみに僕らは国籍は日本だが、現在、海外移住届を出しており住所不定なので、自宅といっていいと思っていると、どうでもいい話だが。

帰宅してシャワーを浴びて、早速、データーのコンバート。本当に50枚撮れている。感動しながら、かおりと喜んだ。

さて、パッキングとウクライナ中央駅の場所を確認しなければ。明日はウクライナ東部のハリコフという街に鉄道で移動だ。5時間ほどかかるらしい。

そして、3年前にモロダーノフ小児脳外科病院で壁画を描いている時に出会った、アレックスさんに会ってインタビューを録るつもりだ。当時、彼の娘さんは頭蓋内で肥大した腫瘍で命が危険な状態にあった。キエフの病院ではどうすることもできず、頭蓋にドレンを差し脳圧を下げて頭痛を和らげる処置しかできなかったという。
その後、世界中から募金が集まり、医療先進国のトルコで外科手術を受けた。ところが、手術後、抗がん剤での根治治療の費用が足りないということが分かった。みんなで、もう一度、力を合わせて根治治療までしてもらおうと思っていたが、彼から「根治治療はしないことにした」と。あれから3年。娘さんは、今のところ再発もなく元気に暮らしているようだ。

国内情勢が不安定でインフレ状態が続いている。輸入物と国内生産物との価格差は物によっては桁が違うレベルだ。そんな中、娘さんの病の再発という不安を抱えながら、内戦や国内情勢をどのように考えていらっしゃるのか。アレックスさんの話をじっくり聞きたいと思っている。