2017年03月 メキシコ・メキシコシティ

旅のきっかけ
日本で生活していると国境というものの存在を意識することはまずない。アメリカ訪問では、その国境というものの存在を確かに目撃した。すると今度はメキシコ側からも見てみたいと思った。そこに住む人達は何を考えるのだろう。
国境に近い街ティファナからメキシコシティを目指す。伝手も無く、絵を描く壁も見つかっていないが、そこには人間が暮らしている。何かを考えている。

アメリカとメキシコ国境のフェンスをメキシコ側から見る。
永延と続く墓標は、不法入国を試みて亡くなった人たちのものだ。

鳩にとっては、国境はただの止まり木にすぎない。

国境の公園、フレンドシップパーク。
毎週末、金網越しに家族の絆を確かめ合う姿が見られる。
「フレンドシップパークではない。断絶公園だよ」とガイドの男性は言う。

メキシコシティーの日本人宿、ペンション・アミーゴ。
飛び込みで事情を説明し壁を提供してくださるように頼んだ。
快く受け入れてくださった。後列中央がオーナーのマリアさん。
旅を終えて

冷静なアメリカ国境側とは打って変わった雰囲気のメキシコ側。アメリカの国境警備隊の命を狙うマフィアの存在や、不法移民を斡旋するコヨーテと呼ばれる集団の存在を知った。
国境や不法移民に対して、メキシコ政府は基本的に対策をとっていないようだった。国境のフェンス間際に民家が立ち並び、そこで何かを取り締まっている様子も特にない。
驚いたのは、フェンスに掲げられたおびただしい数の十字架だ。不法入国を試みて亡くなった人の墓標だと聞いた。
「100ドルを稼ぐのに、メキシコ側では1週間かかるんだ。壁の向こうでは、たった一日で稼げる。金を積んででも、危険を冒してでも家族のために国境を超えたがるのさ」
両国は戦争状態にあるわけではないにもかかわらず、国境を挟み大勢の人が亡くなり続けて、日々新たに憎しみが生まれている。
平和とはいったい何なのだろう。この素朴な疑問は、旅と共に深まるばかりだ。
壁画の場所